刺繍の時間を最優先に
「今は、一番好きな刺繍に時間を注ぐことを最優先に考えています。前は月の半分ぐらいはアルバイトをしていましたが、今は週に2日ぐらい、少ない時だと月4日ぐらいになりました。」
アルバイトを減らす最初のきっかけとなったのが、2022年から始めた刺繍教室でした。
「私にとって初めて定期的に入った刺繍のお仕事で、最初は初心者のコースを月に2回、2年目からは中級者コースも作って月に4回教室を開催しています。収入というよりは『水曜日と木曜日は刺繍をする日』と決められたことが、とても大きかったと思います。職場にも水曜日と木曜日は刺繍の仕事があるので、シフトは入れないでくださいと伝えるきっかけにもなりました。」
一から出直す決意を生んだ、悔しい体験
「実は週4~5日アルバイトに入りながら、個展の準備をしたことがありました。」

「場所を押さえて、がむしゃらに準備をしていても『やばい間に合わない』という事態になってしまったんです。それで、こん詰めてやっていたら右の手首が腱鞘炎になって、ちょっとした戸棚も開けられないくらいになってしまいました。
その結果、メインにしたいと思っていた作品が間に合わなかったんです。無理をして搬入で手が動かなくなってしまったら最悪だから、もう諦めるしかない、と。『何やってんの』って自分に対して不甲斐なさを猛烈に感じました。」
一から出直すつもりで生活スタイルを変える決意
「この経験で、自分の創作活動は全然持続可能じゃないんだと実感しました。しかも半年後(2024年の夏)に個展の予定を決めていたので、このままだとまた同じことを繰り返してしまう。生活習慣や働き方、暮らし方など全部を一から出直すつもりで変えようと決めました。
その第一歩として所属しているオンラインコミュニティ〈Lifestyle Design.Camp〉でやっていた朝の実践会に参加することにしたんです。」
朝の実践会は、オンラインコミュニティを主宰するニュージーランド在住の作家・四角大輔さんが執筆した本を、参加者が読み実践してみるというもの。
「当時の私は早起きを毎日できていたわけではなく、会が始まる朝6時の10分前ぐらいに起きていました。それでも何とかしてついていこうと必死で続けていたんです。
そのおかげで次の個展はギリギリではあったけれど、前のように腱鞘炎で手が動かないというような事態にはならず、何とか無事に笑顔で当日を迎ることができました。本当に実践会のおかげだなと思います。」

この経験を通じて、きよみさんの中に生まれた気づきがありました。
「以前は『刺繍で収入が少しずつ入ってきたらアルバイトを減らそう』と思っていました。でも実際は逆で、時間を作るのが先だと気づいたんです。実践してみると必要以上に働いていないので、何かあった時にお金がどんどん減っていきます。この期間は個展を2回開いたので、その費用で貯金が減っていき怖くなったことがありました。」
「それを正直に、ミニマムライフコスト専門家のたにっちに相談しました。そうしたら『お金はエネルギーだから、かけた分は必ずまた返ってくる。今は移行期。個展に向けて今までずっと頑張って準備をしてきたのであれば、そこに全力で投資したらいいんですよ。』と言ってくれました。」

「この言葉に背中を押してもらい、怖いけれどやりたいことは全部やり切ろうと心に決めて、ちゃんと額装もして、作りたかった印刷物も全部作りました。」
――ここから、きよみさんの作品たちが動き始めます。
たにっちこと、谷 充弘さんは「お金を整え、人生に余白をつくる」ミニマムライフコスト専門家として活動されています。
たにっちさんがきよみさんにインタビューを行った音声が11月にPodcastで配信されました。重なる部分もあれば、知らなかったお話も!声で聴くと文章とはまた違う楽しみや温度感、なによりお二人の声に癒されるので、ぜひこちらもお楽しみ下さい。(全6回)
【配信サイト】
▶︎Spotify
▶︎Apple
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/life-cost-radio/id1653017774
【ゆうききよみ】
刺繍作家。新潟県十日町市在住。雪国の暮らしの中で、日々の景色や心が動いた瞬間を刺繍で表現している。
新潟や東京で個展を開催するほか、アトリエふわりとのコラボレーション作品を発表。
新潟では定期的に刺繍教室を開き、仲間と共に無心になれる時間を大切にしている。
高校時代の夢はファッションデザイナー。さまざまな刺繍作品の制作を経て、自然と“服づくり”へと戻ってきた。2025年より、新プロダクト「融けるまで着たい服」を始動。
2026年3月中旬から約1か月間、札幌での個展開催を予定している。
