解像度を上げて見えたのは、刺繍に宿るロックな魂 -刺繍作家 ゆうききよみさん-

きよみさんへインタビューを始めてから、他の刺繍作家さんも気になりSNSなどで検索してみると本を出版される方やキットを販売されている方、刺繍のやり方も手縫いやミシンなど様々でした。

「きよみさんにとって、刺繍ってなんだろう?解像度を上げたい!」今回はそんな気持ちからインタビューをスタートしました。

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「刺繍をどのようにして人と共有したいかというと『教室を開くこと』『展示をやること』『お洋服に刺繍すること』この3つが今の自分に合っていると感じています。」

みんなが集まれる場づくりを1番好きな刺繍を通して

「いろんなタイプの刺繍作家の方がいらっしゃって、自分はどうしたいのだろうと思っていたんです。そんなにまめな性格じゃないので、図案を起こして設計図までちゃんと作るようなものはできません。なるべく下描きをしないで、行き当たりばったりでやるのが好きなんです。同じものは二度とできないし、再現性がないから人にも説明できないんですけど、そういうのをやりたいなと思っています。」

きよみさんにとって展示とはどのようなものでしょう。

「展示は思いっきり好きなことをする。お洋服だったら着ることを想定したり、販売するブローチだったら作業時間やコストをざっくり考えたりするけれど、展示ではそういうことをなにも考えていません。ただ好きだからやる。そういう時間が必要だと思います。」

「陶芸家の友達が『1年に1回の個展を目標にして、新しいものを作っていかないと作家としての深みが生まれない』と言っていました。『注文を頂いたものばかり作っていると同じものしか作らないし、同じものばかり作っているといずれ飽きられる。何より自分が飽きてくる。』と。」

この考えを聞いて、いかがでしたか?

「めちゃくちゃ共感します。アルバイト先の飲食店でも、お料理を新しくしていかないとお客さんが飽きて来なくなってしまう。料理人の方がちゃんと挑戦をしていて、創作意欲があって。いろんな初めてに挑戦しているのを見ると、新しい風が流れているなと思えて、良いんですよね。」

刺繍においての新しい挑戦とは、どんなものがありますか。

「例えば、今まで使ったことのない素材を使ってみる。最近は刺繍糸を使わなくなってきました。刺繍糸の時はいろんな色をいっぱい使っていましが、織物で使っているような糸で刺繍をしたら一色だけでやってみようかなとか、白だけど微妙なニュアンスや素材感の違う糸を色々使ってみようかなとか。」

刺繍糸には無い苦労もあるそうですが、それも含めて実験と挑戦を楽しまれているのが伝わってきます。

作品と一緒に使用している糸がならぶ 写真: 福井はなさん

刺繍をするときのインスピレーションはどんなものからきていますか。

「散歩をしていて、なんかいいなと思ったものを写真に撮ってそれを刺繍にするとか、昔から日常の景色が多いですね。言葉では説明できないけれど『なんかこれいいな』を刺繍で表現しています。道端に生えている『この草いいな』をどう説明したら良いのかわからなくてうまく説明できない。そんな時は、自分なりに刺繍で表現できたらスッキリします。」

写真を撮って残すのとは違う?

「写真だけだったら飽き足らないんですよね。」

気になるな、その感覚。刺繍にしようと思う原動力というか。

「例えば音楽ができる人はこれを歌にする。絵を描く人だったら絵を描く、文章を書く人だったら文章に書くのと同じ感覚だと思います。」

それがきよみさんにとっては刺繍?

「そうですね。すごく周りくどいことをしているけれど、一番面白いです。」

「個展に向けて作っている刺繍があります。以前『きよみさんって本当は怒ってますよね。めっちゃ怒ってますよね。それを作品にしたらどうですか。』って言われたことがあったんです。なんでわかったの?と驚きました。本当は怒っているから、宮本さんみたいな人が羨ましいんだと思います。」

宮本さんとは、エレファントカシマシの宮本浩次さん。2009年からファンになり新潟から東京へライブを見に行くことも。幼稚園の頃はTHE BLUE HEARTSが好きでした。

「本当は、ああいう風にしたいんですよ。叫び散らかしたいんです。それができないから羨ましいな、良いなって思って見てる。今回は叫び散らかしたい感情を刺繍で表現することに挑戦しています。

まだ途中でなんとも言えないですが、今のところすごいカオスです。大丈夫かな、エスキスさんに飾っていいのかな、みたいな。

やる前は、みんながドン引きするような禍々(おどろおどろ)しいものができちゃったらどうしようと躊躇する気持ちや怖さもありました。」

きよみさんが、この感情を素直に出して良いのかもしれないと思えた出来事がありました。

「オンラインイベントに参加したときに、自分の経験を泣きながら話している方を見て、いやもうそんなのしょうがねえよって。葛藤とか、過去の上手くいかなかったどうしようもない事は、汚いことじゃない。誰だってそういうことが多かれ少なかれあるんだから、別に隠さなくてもいいし絶対に汚いことなわけがない。むしろめちゃくちゃピュアなことかもって。あのとき話してくれた方にありがとうって思いました。私が今やっているめっちゃカオスなやつも、これはこれでいいんじゃないかなって思えたんです。」

きよみさんは「宮本さんの常に全力なところがかっこいい、熱いところが好きなんだと思う」と話してくれました。それはきっと、きよみさんの中にも存るもの。刺繍を通してどんな叫びが届くのか、受け取ることを想像してゾクゾクしています。

(取材日:2025.12.30)

【ゆうききよみ】
刺繍作家。新潟県十日町市在住。雪国の暮らしの中で、日々の景色や心が動いた瞬間を刺繍で表現している。
新潟や東京で個展を開催するほか、アトリエふわりとのコラボレーション作品を発表。
新潟では定期的に刺繍教室を開き、仲間と共に無心になれる時間を大切にしている。
高校時代の夢はファッションデザイナー。さまざまな刺繍作品の制作を経て、自然と“服づくり”へと戻ってきた。2025年より、新プロダクト「融けるまで着たい服」を始動。
2026年3月下旬から約1か月、札幌で個展の開催を予定している。

https://www.instagram.com/yukikiyomi_embroidery?igsh=MTg2cngwM3M0cHM2eg%3D%3D

▶︎CAFE ESQUISSE(札幌での個展開催予定場所)

https://www.instagram.com/cafeesquisse/?igsh=MWVkbGNrcnRwNHJhYg%3D%3D