ほどけて、また
写真家 宇城義二さんの3回目をお届けします。
「今日話したいと思ったのは、群青のその後。息子の部活が7月に終わってから2ヶ月が経ちました。この間に起きた変化や見えてきた群青の眼差しについてお話したいと思います」
この2ヶ月は、どんな時間を過ごされていましたか?
「部活が終わった時に、僕のなかで『終わった』という感覚が強くあったので、部活やバレーボールの話を避けていたわけじゃないけれど『もう終わった話だから次に行こう』『これで作品はできた』と群青の撮影も終わりにして、切り替えようとしていましたね。同時に燃え尽きたくない気持ちや焦りもあったのかもしれません。『群青はこれで終わり。次に進むぞ、次のテーマを探すぞ』という気持ちになっていました」
最近、石垣島へ旅をされていましたよね。
「旅をして意識が外に向き始めて、新しいインスピレーションもあって、すごく良かったです。ただ群青の作品を撮った期間は、家族のことや自分の内面に矢印が向いたすごく密な時間でした。それなのに自分が『これで終わり』と思って外を向き始めると、昔のように家族や息子に対して関心が向かなくなってしまって。群青を撮る前に戻ってしまったようで、残念だな、辛いなと感じていました。写真を撮ることは、相手を見ること。相手に関心を持って、愛していないと見ないわけで。この2ヶ月は外を向いていたから、全然家族の方を見ていなくて、うまく愛情が循環していないような気がしました」
相手を見なくなったら愛情を向けていないということではないと思います。見方はその時々で変わることもあるけれど、相手を想っていることに変わりはないというか。宇城さんは戻っている感じがするかもしれないけれど、感情が溢れる1年を過ごして変わっていると思うんですよね。
「僕のなかで人を見ることで愛情が芽生えてくる感覚を『群青の眼差し』と呼んでいます。その眼差しをせっかく見つけたのに、部活が終わったことで失ってしまうのがもったいなかった。バランスだとは思うのですが、この1年、息子をずっと見ている時間があったからより感じるのかもしれません。関心を寄せるって別に写真を撮らなくてもいいと思うんです。ただ僕の場合は相手の情報を得る時に視覚情報が大きいので、見るということが相手に対する一番の愛情表現になる。だから余計に、そこで終わりにしてしまうことが、もったいなく感じたのだと思います」
終わりにしたかったのですか?やり切ったという感じだったのでしょうか。
「はい、やり切った感じでしたね。でも今は、まだ終わっていないんじゃないかなと感じ始めています。無理に終わらせようとしなくても良いんだなって。本当はもっと余韻に浸りたい気持ちを、無理に抑え込もうとしていたのかもしれません。息子や妻は余韻に浸っているのに、『もう終わったことでしょ』『次に行こうぜ』みたいな。群青を引きずりたくない、燃え尽きて自分には群青しかなかったと思いたくない気持ちがありました。熱中するものを失うのが怖かった。今は一緒にもっと余韻を楽しもうと思えるようになりました」
それは焦りのようなものだったのでしょうか。
「そうですね、もしかしたら焦りがあったのかもしれません。個展の準備に集中はしているけれど、終わった後のことまで考えて、先を見すぎて苦しくなっていました」
先のことを考えすぎていたと、自分で気づけるのがすごいです。わたしもありますが、なかなか気づけなくて。
どうやって気づいたのですか?
「石垣島に行っている時は、全然気づいていませんでした。もしかしたら最近受けたアートブックのコーチングがきっかけだったかもしれません」
宇城さんが受けているのは、編集者の方が主催するアートブック講座。アートブックとは作品を並べたカタログではなく、本そのものがアート作品となるものを指しています。
「これが、めちゃくちゃ良くて。こういう講座をカメラマンや写真家の方がやることもあるんですけど、編集者がやるのがすごく良い。編集者と写真家の目線って違うので。その方に群青の作品を見てもらったら『すごく詩的な作品ですね」と言われて。『こういう作品は、強弱をつけたりリズムをつけたりすることが本を作る上ですごく大事になってくるから、好きな音楽を作るように音楽的に編集した方が良いよ』と言われました。それがもう目から鱗で、そんなふうにしていいの?と感動しちゃいました」
「そうやって『群青』について色々話しているうちに、群青にはまだ可能性がある、まだまだいける、と思えてきて。これがさっきの『群青を無理に終わらせようとしなくて良い』に繋がったのかもしれません」
『群青』の新しい写真も撮っていると伺いました。
「石垣島で撮った写真や、息子の部活が終わってからの写真を入れてみるのも面白いかなって。逆に僕が撮った過去の写真もちょっと入れて、過去の記憶も混ぜてみるとか」
『群青』は宇城さんが学生の頃から続いていて、これからも共にしていくものなのかもしれませんね。
「『群青』という世界観は、部活をやっていた1年間の写真だけで完結するものではなく、この先も続いていくもの。今撮ったものを20年後に見たら『群青だな』と思えるものになり得る。それぐらいの作品なのかもしれないと可能性を感じています」

群青
宇城 義二個展
Yoshitsugu Ujo
2026.11.21(土)13:00-17:00
2026.11.22(日)10:00-16:00
2026.11.23(月)10:00-15:00
※時間は変更の可能性があります。
入場料3,000円(税込)
場所:Lifedesign NEST
神奈川県三浦郡葉山町長柄257
Instagram
https://www.instagram.com/ujo_photography?igsh=MTJpMTVqb3l5eHM0MQ==
インタビュアー、ライター:nazeka 齋藤恵子
取材日:2026.9.19