「涙のなかで」写真家 宇城 義ニさん

ほどけて、また

写真家 宇城義二さんの2回目をお届けします。

今回も公開インタビューを行い、途中からは参加者の皆さんも一緒に、自分が感じることや経験談を話してくださいました。

「群青は対話で深くなっていく作品だと感じました」と宇城さん。

月に一度ここで重ねられる対話の時間も、11月の個展で出会う人たちとの対話も、すべてが作品を深くしていくものなのかもしれません。

———

前回の記事を仕上げるにあたり「どこまで曖昧さを残すか」宇城さんと細かく確認しながら作っていきました。

「喋っている言葉は、迷いながら喋ったり曖昧になったりしているから、その辺りをカットしてもっと簡潔にしてほしいと修正を出したんですよね。曖昧な表現が好きじゃないわけではないけれど、文章は色々考えてから書くから簡潔に書けて、迷った末に選んでいるから迷いの少ない文章ができる。あとで見返すと、こっちの表現の方が良かったと思うものが出てきて、そっちを採用したくなりました」

やり取りを繰り返すなかで、宇城さんにとっての「曖昧と抽象」について聞いてみたくなりました。

抽象的な表現が好きなのは昔からでしたよね。

「昔からわかりやすい映画も好きなんですけど、ちょっとよくわからない話や終わり方をする映画も好きでした」

映画の結末が曖昧だとハッキリさせてよ、と思うことはありませんか?

「ハッキリさせたいと思う時もあるけれど、雰囲気だったり色だったりその時の音楽だったり、そういうものが良ければ抽象的で曖昧なままで良いと思う話もありますね。あまりストーリーは覚えていないけれど、印象だけ覚えているような作品。絵もそうですが抽象的なものを見ていると、なんとも言えない感覚になるんですよね。そういう映画だったり抽象画だったりが好きでしたね。見ていて、良いなって素直に思える。自分の”好き”の根本的な部分、ルーツです」

わたしも抽象画を見ていると”なんか好き”という感覚で惹かれる時が多い気がします。
この感覚って何なんでしょうね。

「僕もね、わからなくて。でもなんか惹かれて、良いなって思っちゃう。上手だと思うわけでも、ストーリーがあるわけでもなく、”なんかこの感じ良いな”と思う。そういうものが抽象的な作品に多かったですね。この不思議な感覚を届けられる境地に立ちたい。見た方が、よくわからないけれど良いよねと感じてもらえるような作品を作りたいです」

一方で、息子さんの部活の応援に没頭したことで、見たい映画にも変化が起きているようでした。

「今はどちらかというと、物語重視で見ていることが多いです。どれだけ泣けるか」

泣きたいのですか?

「泣きたいんですね。感情移入したい。泣くっていう感情を出したい。1年間息子のバレーボールを見てきて、すごく感動してすごく泣いたんです。感動するって素晴らしいなと思えて、これがすごく良かった。毎日感動して泣けたらいいじゃないですか」

わたしは家族や友達も含めて人前で泣けなかったんですよ。宇城さんは感情を出せる人でしたか?

「いいえ、出せていませんでした。ここまで感動することは少なくて、感情がほどけてきたように思います。前より感情が溢れてくるようになって、涙が出やすくなりました」

『群青』は、その変化があったからこそ生まれた作品でもあるような気がします。

「そうですね。これまでは泣く時に、どこかで我慢しようと思いながら泣いていました。人前で泣くことにブロックがあったのだと思います。でも息子の応援をしている時は、写真を撮りながら涙が溢れてくるんです。その時に、もう泣けばいいよ、思いっきり泣けばいい、周りの人とか気にしなくていいから泣けるだけ泣けって自分に言ってあげることができました。感情のままに味わい尽くして、湧き上がってくる全ての感情を感じ切った。今までにない1年間でした」

感情と涙が溢れる1年を過ごして、変わったと感じるところはありますか?

「もっと感情に素直でいたいと思うようになりましたね。ネガティブな感情もポジティブな感情も、両方とも素直にあるものだから、それを感じ切りたい。特に辛いことは感じないように蓋をしてしまうのですが、そうすると良い感情にも蓋をしてしまいそうな気がするんです。この1年間は、僕の青春の時に味わった苦しさや辛かった感情にも蓋をせず感じ切れたと思います。感じ切ったからこそ、苦しみや辛かった気持ちから解放されて、後悔やネガティブな感情から自分自身を許してあげられる。最終的には、じわっとなるんだよという自信になりました。そして、今までより敏感になった感情を閉じ込めたくない。せっかく開いた感性を閉じたくない気持ちがすごくあります」

泣くのを我慢する癖。これは、宇城さんだけのものではありませんでした。

宇城「モリへーさんはどうですか?」

モリへー「自分も人の前だと泣かずに我慢しちゃうタイプでした。でも、宇城さんと同じで変わってきています。こないだイベントに行って、映像を見ていたら涙が溢れてきて。その時に人目を気にするより、自分の感情を出すことの方が大事だなと思えて、感情を出して泣くことができました」

ゆうすけ「僕は泣いちゃいますね。もらい泣きとか、頑張っている人の話を聞いてとか、ところ構わず系かもしれないです。だから、なんで我慢するのかがわからない。嬉しいとかありがとうとかと同じ感情の一つで、我慢しないといけない感覚が薄いかもしれないです」

宇城「Hideさんもお話できますか?」

Hide「『群青』というタイトルも涙と繋がるというか、インクがじわっと紙に染みたり、水の中に落ちたりとか、そういった風景も思い浮かぶんですけど。宇城さんの中で緩やかにゆっくり広がっているような印象をすごく感じられて。NESTという思い入れのある場所で、このじわーっと広がりつつある心象が合わさって、すごくいい展示会になりそうな予感がします」

宇城「涙っていうのは結構ね、キーポイントかもしれないです」

モリへー「涙もそうですし打ち合わせとか、完璧じゃない状態もさらけ出せるようにどんどんなっていますよね」

宇城「本当にこの場自体が、制作や展示の一部になっているなと感じています」

群青
宇城 義二個展
Yoshitsugu Ujo


2026.11.21(土)13:00-17:00
2026.11.22(日)10:00-16:00
2026.11.23(月)10:00-15:00
※時間は変更の可能性があります。
入場料3,000円(税込)

場所:Lifedesign NEST
神奈川県三浦郡葉山町長柄257

Instagram

https://www.instagram.com/ujo_photography?igsh=MTJpMTVqb3l5eHM0MQ==

インタビュアー、ライター:nazeka 齋藤恵子
取材日:2026.8.9