「ほどけて、また」宇城 義ニさん

「ほどけて、また」 — ひとりの歩みと言葉をみつめる —

今回のゲストは写真家の宇城 義二(ウジョウ ヨシツグ)さんです。

2021年の出会いから、企画への写真提供を快く引き受けてくださったり、アーティスト写真(プロフィール写真)を撮影していただいたり、写真を通して温かく見守り応援してくださる存在です。

2022年には、15年勤めた広告写真制作会社を退職。フリーランスの写真家として活動を始め、今年11月には初めての個展「群青」の開催を予定されています。

「『群青』はこの1年間の体験をなんとか形にできないかという想いから始まった作品です。息子の思春期だったり、自分の青春時代の記憶だったり今の記憶だったり、そういったものが交錯して群青色に混ざり合う感じを写真にしました」

宇城さんはこの1年、息子さんが所属するバレーボール部の応援に没頭しています。1回目のインタビューを行ったのは、中学3年生となり最後の大会が始まった頃でした。小学生の頃は送り迎えをするだけだったバレーボール。それが今では、息子さんから「練習試合は来ないで」と観戦を控えるようお達しが出てしまうほど、宇城さん自身が没頭するようになったそうです。今回は没頭する理由を紐解きながら、この体験がどのように「群青」の作品作りへと繋がっていったのか、お聞きしました。

ブログなどを拝見していると、没頭している背景には息子さんが成長していく姿を親目線で見守る気持ちと、過去のご自身の記憶を思い起こしている場面とがあるように感じました。

「それがもう交互に来る感じですね。どちらかというと試合中は親目線で見ていて、息子が仲間たちと一緒に登下校しているような友情を感じるシーンでは昔を思い出す。シーンによって視点が変わっていました。息子がバレー部に入ったことで友達がいっぱいできている風景を見ていると、すごく感動したり昔の自分を思い出したり。小学生の頃の息子を思い出して『よかったな』と思うこともありました」

昔の自分の体験で、特に思い出す出来事はありますか?

「僕の中学の部活は野球部でした。野球が好きだったし、兄貴も野球をやっていてその繋がりもあって入部しました。一方で小学校の時に仲良かった子たちは、強豪のバスケ部にみんな入っちゃったんですよね。毎日練習して土日は試合、県大会では1位になるようなチームで、今の息子のチームに似ていました。かたや僕のチームは弱小で、県大会の1回戦に勝てるかどうかもわからない状態でした。それでも仲は良かったので、テスト期間中など部活がない時は一緒に遊んでいたのですが、みんなバスケの話ばかりしていたので、仲間に入れず寂しい思いをしました。また弱小野球部と、からかわれたりもして、悔しさともどかしさで傷ついてしまいました。その時の寂しさや辛かった思い出が今も残っています。」

「息子を見ていると、僕が仮にバスケ部に入っていたらどうなっていたのだろうと追体験しているような感覚になります。自分が中学時代にやりたかったけれどできなかったこと、仲間と一緒に遊んだり仲良い子たちと一緒にスポーツに没頭したりすることを、息子がやっている。それを見ていたら、『あ、よかったな』『こういうことか』と。自分の寂しさや辛かった過去の思い出も、いいかなと思うことができました。もう一回青春を謳歌している感じがします」

直近の試合は、どのような心境で見ていましたか?

「今は昔を思い出してオーバーラップすることはだいぶ少なくなって、親目線で息子の成長に感動しています。1年生の時にサーブも入らなかった子が、試合でスパイクをバンバン決めている姿が普通になっているのを見て、号泣する。自分の中学時代を思い出して、懐かしいとか、ああいうことあったなというのは、もうだいぶなくなって、十分味わった感じはあります。今はほんとに最後なので、この瞬間を1秒も見逃したくない、そういう感じですね。去年の7月ぐらいから、ちょうど1年かな。短いと言えば短いですけどね。すごくいい時間を過ごさせてもらいました。こんなに没頭するとは思わなかったですね」

没頭していったのは、思いがけない出来事だったのですね。

「そうそう、始めからこんなに燃えていたわけではなく、徐々にハマっていった感じですね。初めて試合を見に行った時に息子がコートに立って試合をしているだけで、すごく感動しちゃって。小学校の頃は、内気で家にこもっているような子だったので。まさかそんな子がコートに立っているなんて。それから毎週練習試合や公式戦を見に行くようになりました」

息子さんが小学生の頃は距離感が難しかったと、以前お聞きしました。

「今思えば、昔はあまり家族に興味がなくて。あるつもりだったんですけど、どちらかと言えば仕事とか外の活動で頭がいっぱいで、あまり向き合えていなかったと思います。息子が小学校の時にバレーボールをやりたいと言って、区のクラブチームに送り迎えをしていたんです。でもその時は、送り迎えするだけで、今考えるとすごく冷めていたなと思います」

「中学生になってバレーボール部に入ったことで、僕の外に向いていた意識が内側に向くようになって。昔に比べると家で過ごす時間が増えて、関心事も家族のことが多くなりました。今はそれに、すごく充実感がありますね。この1年で本当に変わりました」

わたし自身、映画やドラマを見て自分と重ねることはあっても、そこから作品を作ろうと思ったことはなくて。どんな感覚だったのか気になります。

「そう、そうなんですよね。あんまり自分でも言語化はできていなくて。降りてきたというか(笑)」

どの部分が降りてきたのでしょうか?『群青』というテーマか、写真撮ろうという気持ちか。

「元々抽象的な表現をしたいと思っていたので、昔は抽象画をよく描いていました。写真ではできないと思い込んでいたら、たまたま写真で良いものができて、『写真で良いじゃん』と思えました」

たまたま、できた?

「息子の姿というか気配というか、そういうものは残したいとずっと思っていました。でも思春期の子は、なかなか撮らせてくれないから遠目から撮ったり、こっそり撮ったり、ちょっとわからないように撮ったり。どうやったら息子だけど息子じゃない風に写真を撮れるか考えていましたね。バレーボールに没頭している息子や僕、そして過去の僕。その暮らしや日々を抽象的に捉えながら、そこにある感情や記憶が変わっていく様をどうやったら写真で写し出せるか。色々と手探りでやっていったら『これなら、撮れるんじゃないか』と思える方法を見つけたんです」

個展「群青」の作品を撮ったのは、部活が終わった時のような、区切りのタイミングではなかったと思います。どのようなタイミングだったのでしょうか。

「これがきっかけだったかなと思うのは、前に自己認識セッションをしてもらった方と、同じセッションを受けたことがある方と一緒にお話しする機会があって。僕がどういう風に過去の自分と向き合って認めて、変わってきたかをお話しするアフタートーク会がありました。その事前打ち合わせから本番までの間で、めちゃくちゃインスピレーションが湧いてきて作品が生まれはじめました。昔の自分や過去の記憶にふれたことで、改めて自分の内側を見つめる機会になったことが影響したのかもしれません。そこがほどけたポイントですね」

「この写真は結構最初のほうに撮った写真です。家でこういう風にできないかな、光を撮れないかなと実験的にやっていた時がありました。やっていくうちに『なんかいいな、このよくわかんない感じ』と思えるものが撮れて、こういう抽象的なものもできるんだなって思えたんです。手法がわかってからは、もう早かったですね。息子を撮ったり、学校に行って学校を撮ったり、試合を撮ったり、息子の洋服を撮ったりとか、色々なものを撮りました。それが続いていって、本当に止まらなくて。新しいイメージがどんどん湧いてきて、それを写していった感じです」

「群青」キービジュアル

「これが、今回の個展のキービジュアルになっている写真です。群青の光。より曖昧で何かよくわからないけれど、僕の記憶の移り変わりと重なって、こんな感じだよねと思える写真が撮れました」

宇城さんのイメージする「群青」とあっていたのですね。キービジュアルは、どこまで狙って撮っていますか?以前、狙いすぎると上手く撮れないとお聞きしたことがあったので。

「これは群青の光を撮りたいなと狙っていて。撮りためていく中盤ぐらいで、そろそろ狙って撮りたいと思っていました。これがすごく面白くて、今まで見えなかった光が見えるようになるというか。写真のテーマを『群青』に決めると視点が変わって、群青の光が見えるようになるというか。今までもそこにあったのに、意識していないとわからなかったものが、そこにあると気づく。すごい不思議な、本当に不思議な、体験をして。『あるじゃん』って見つけた時が本当に面白くて。学校で部活の応援をしていて、試合がない間に、ちょっと撮ろうかなと目を向けたら、あるじゃん、みたいな。今まで全く見えてなかったから、本当に面白かったです」

手法が見つかりテーマが決まり、このキービジュアルが生まれたのですね。

「友人に息子のバレーボールの話をすると、『青春ですね』とか『また青春を味わっているんですね、青春楽しんでください』と言われたのが、ずっと残っていて。作品として撮っているものは全て、自分の中でもう一度青春を味わっている感覚が、すごくあります。そこでやっぱり青、青いなってイメージがずっとあって。青いイメージなんだろうな、この自分の感情。でも青でもそんなに青くない、真っ青じゃなくて。混ざり合う深い青色、それって群青だよなと思って、『群青』とつけました」

群青
宇城 義二個展
Yoshitsugu Ujo
2026.11.21(土)13:00-17:00
2026.11.22(日)10:00-16:00
2026.11.23(月)10:00-15:00
※時間は変更の可能性があります。
入場料3000円(税込)

場所:Lifedesign NEST
神奈川県三浦郡葉山町長柄257

Instagram

https://www.instagram.com/ujo_photography?igsh=MTJpMTVqb3l5eHM0MQ==

インタビュアー、ライター:nazeka 齋藤恵子
編集:木版ストーリーテラー ゆうへい

取材日:2026.6.20


「ほどけて、また」
— ひとりの歩みと言葉をみつめる —

この連載では
ひとりの声に数ヶ月、耳を傾けます。
(その時に必要と感じた月数で実施)

初めに尋ねるのは「ほどけた日」のこと。

無理をしていた気持ちや手放せなかった何か、
固く結んでいた思いが、ふとほどけた日。

それは本来の自分に戻る
“はじまり”だったのかもしれません。

誰かの歩みが、あなたの心をふわりとほどいて
今のあなたを優しく受けとめる時間になりますように。